空想は豊饒な土壌であり、そこから想像力が育ち

そして大いなる光のほうへ伸びるのです

サラ・バン・ブラナック

空想WLW

 「ロール概論」の途中ですが、ここで臨時ニュースをお伝えします。
 ロケテスト段階とはいえWLWの世界には新しい動きが表れ始めています。書きかけのシリーズを終わらせることも重要ですが、今回はちょっと別のものに目を向けてみましょう。
 なお、記事の作成にあたってHolynightさんにご協力をいただきました。急なお願いを快く受け入れていただき誠にありがとうございます。

 近頃、TwitterSNS『ワンダラ』でとある戦術が話題に上っています。
 吉備津彦を使ったもので、画期的な勝率を誇り、時に「最強」という形容を冠していたこともありました。この言説を真に受ければWLWはゲーム的な意味において本稼働を前に終了してしまったことになります。

 ゲームが1回もプレイできないうちに終わってしまうのは悲しいことです。発案者の方々には大いに敬意を払いつつ、彼らに僅かばかりの勘違いがあってWLWが今後も続くことを期待しながら話題の戦術である『ホーリー式敵城強襲戦法』について考察したいと思います。

■ ホーリー式敵城強襲戦法(以下、『戦法』とする。)とは

 『戦法』についてはHolynightさんの書かれた『ホーリー式敵城強襲戦法』に詳しく、この記事ではそれに基づいてお話させていただきます。
 
 名称についてもHolynightさんの名前を冠する『戦法』の名前を使用しますが、『戦法』については他の方が別称によって言及していることも多く、最初に『戦法』に相当する行為を実践されたのがHolynightさんではない可能性があることを申し添えます。

 『戦法』の概要は次の通りです。
 使用するキャストは吉備津彦。「鬼断ち」「金剛の位」「岩砕の太刀」のスキルが必要で、特に「岩砕の太刀」は重要なポジションを占めます。

戦法(1)

 まず、相手チームとの遭遇を避けながら敵城へ接近します。森を活用すれば安全に進軍できるでしょう。やむを得ず戦闘になった場合は「鬼断ち」で迅速に切り抜けます。

戦法(2)

 到着したら「金剛の位」による強化の後に城を殴ります。城から兵士が排出されても「岩砕の太刀」を使えば無傷で殲滅でき、攻城を継続することができます。
 攻撃は落城まで終わりません。ゲームはあなたの勝利です。
 やったね!

■ 『戦法』の長所

 以上が『戦法』の根幹です。状況次第で多少の派生はあれど基本は変わりません。
 驚くべき単純さですがそれ故に本質的といえます。

 『戦法』のセールスポイント、Holynightさんが言うところの「敵主城にダメを与えつつ、2レーンor3レーン分の兵士をノーダメで倒せて、経験値を稼ぎつつ、味方レーンに対して間接的な支援ができる」ことはファイターというロールの大きな役目です。
 吉備津彦がファイターである以上「チームゲージ」と「経験値」という2大リソースからは逃れられません。これらを一度に獲得できる『戦法』は吉備津彦をファイターとして活用するより良い手法だといえるでしょう。
 
 私なりの解釈も加え『戦法』の長所を大きく3つに分類しました。

□ チームゲージを稼げる

 これによって『戦法』は「遂行すれば勝つ戦法」になっています。対戦相手の動向を度外視して仕掛けていくことができますし、逆に相手に対応を強いることさえ可能です。
 レベル上げに終始した結果、戦闘では圧倒したもののチームゲージを削られて負けた、という戦術レベルでの選択ミスを心配せずに済むことは『戦法』の大きな強みだといえます。
 
 キャスト本人が直接城を殴るため兵士を媒体にした攻城より即効性があることもポイントです。吉備津彦が「金剛の位」によって『戦法』の効果を高められる点も見過ごせません。

□ 経験値を稼げる

 このことは『戦法』をゲーム全体を通して運用可能なものしています。チームゲージを狙ってリードは得たものの戦況はボロボロという展開に気を揉む必要はありません。
 この強みは城(拠点)と兵士を同時にできるスキル「岩砕の太刀」に支えられており、吉備津彦の唯一性を引き立てているといえるでしょう。
 
 単純な殲滅速度で比較すれば吉備津彦を上回るキャストは存在しえます。
 しかし、チームゲージという名のディナーに経験値のデザートをトッピングできるなら誰もがそうするでしょう。2種類のリソースを同時に獲得できれば殆どの対戦相手を圧倒することが可能であり、多少の効率の差は問題ではありません。

□ 吉備津彦単独で遂行できる

 『戦法』遂行が容易であることを表しています。必要なのは『戦法』を理解したプレイヤーが吉備津彦を選択し、ゲーム中で正しく振る舞うことだけ。チームメンバー同士の協調や意思疎通は一切必要ありません。
 WLWの全国対戦はランダムマッチングであり常に熟達したメンバーと巡り合えるわけではありません。実行のハードルが低い作戦はそれだけで強いと言えるのです。
 現時点では人間とチームアップすること自体が珍しく、それ故かHolynightさんも言及していませんでしたが、今後を見据える際には特筆すべきポイントになりえます。

■ 『戦法』の短所

 『戦法』で得られる恩恵の大きさは疑いようがありません。一方で『戦法』が本当に成功するかどうか、現実性に関する問題については一考の余地があるように思えます。
 
 『戦法』は戦果を挙げることで実効性の高さを証明し続けてきました。ただし、現在のWLWは全国対戦であってもチームメンバーに2~3人のNPCを含んでいる状況です。彼らの動きは画一的で融通が利かず、多くのゲームでカモとなります。
 本稼働後にNPCが取り払われて人間同士の衝突が行われるようになれば『戦法』の好ましくない面が現れるかもしれません。少し想像してみましょう。

□ 妨害されやすい

 相手チームにとって膨大なリソースを荒稼ぎする『戦法』は断固阻止すべき存在です。十分な知識を持つプレイヤーなら吉備津彦を自由に泳がせる真似はしないでしょう。
  幸い『戦法』は明確に標的を定めていて相手からしても捕捉が容易です。自城の周辺で待ち構えておけば間違いがないので悠々と防衛に臨めます。
 
 一方、『戦法』を仕掛ける側にとって攻城中の妨害は死を意味します。相手陣地の最奥に乗り込んでいるため逃走はままならず、陣地の恩恵で無限にHP回復する敵キャストを討ち取ることもまた不可能です。
 『戦法』とは不退転の特攻であり、いずれ撃破されて相手チームに経験値を献上することになります。その前に損益分岐点までリソースを稼がなければいけませんが、理性のあるプレイヤーを相手にするなら達成は難しいでしょう。

□ 集団戦と両立できない

 『戦法』は吉備津彦のポテンシャルをフル活用したワンマンプレイであり、チーム全体で相手に立ち向かう集団戦の対極に位置します。
 相手チームが『戦法』遂行中の吉備津彦を撃破した場合、その後10数秒間にわたって自軍の数的不利が確定します。敵にとって集団戦を仕掛ける絶好のタイミングです。集団戦の最重要素はキャストの多寡であり、他での代替は困難を伴います。
 集団戦の敗北によって奪われるものは多岐にわたります。リソースを稼ごうと『戦法』を仕掛けた結果、得られたものが自軍拠点の倒壊では報われようもありません。

■ 『戦法』の応用

 個人的な考えでは、今のままの『戦法』を本稼働後の環境に適合させることは困難です。
 ですが、これは『戦法』の全てを否定するものではありません。ロケテストプレイヤーたちが見出した吉備津彦のムーヴは勝利を掴む所作の原型であり、WLWという世界に撒かれた種です。今後にあわせて変化していく余地は大いにあるはずです。
 
 その変化を全て言い当てるに私はあまりにも能力が足りません。せめて2つばかり『戦法』の可能性を提示してみましょう。

□ 城にこだわらない攻め方

 場所を特定されやすいことがネックなら、目標を分散して敵の目を攪乱するのはいい手に思えます。兵士はレーン上の至る所にいますし、チームゲージを削るには拠点を攻める方法もあるのですから。
 
 相手チームの動きを確認し、手薄な拠点に狙いを絞り、兵士が排出されるタイミングで強襲して「岩砕の太刀」を叩き込みます。事が済んだら素早く撤収です。
 現在の形と比べて一度に得られるリソースは小さくなりますが、死亡を回避することで相手チームにボーナスを渡さずに済みます。ローリスク・ローリターンと言えるでしょう。
 
 自軍陣地に近い場所で行動し、集団戦に参加しやすいこともメリットです。

□ 終盤のラストアタック

 『戦法』が集団戦への弱さを生み出すのなら、集団戦を仕掛けられないタイミングを見計らって仕掛けてやればいい話です。
 最も分かりやすいのはゲーム終了直前でしょう。いかに大きな利益を生み出す集団戦であっても時間がなくては無用の長物。即効性では『戦法』に軍配が下ります。

 ひと殴りできれば儲けものと割り切り、ホイッスル間際に敵城へ強襲することは大きな意味を持ちえます。多くは無為に終わるでしょうが、時に負けていたゲームを引っ繰り返すかもしれません。

■ 終わりに

 WLWが本稼働すれば幾多の戦術がゲームを彩ることになるでしょう。成功も失敗もあると思いますが、そのひとつひとつがWLWを豊かにしていくはずです。
 枯れ木も山の賑わいと言います。木々はいつか枯れ果てるとしても、始まりにおいては瑞々しく生命力に溢れていたはずです。私たちに時の流れは止められませんが、諦めずに木を植え続けることはできるでしょう。

 『戦法』はきっと、森となるべき場所に植えられた最初の一苗です。この若苗が今後どのように育つかは私の及ぶところではありませんが、少なくともその始まりの瞬間に立ち会えたことは貴重な体験だったと思います。